やめなきゃいけない理由より、「やめて得する理由」を見よう
「もうやめなきゃダメだ」と頭では分かっていても、なかなか動けない。
でも実は、“やめなきゃ”では行動のやる気は続きません。
行動のエネルギーになるのは──
「やめたら、これだけ得をするんだ」という“見える成果”です。
この記事ではギャンブルに「行きたくなる気持ち」を「行ったらもったいない気持ち」に変える為に「今やめたら手に入るもの」などを数字やイメージで“見える化”して、 無理矢理ではなく“納得と期待”で動けるようにしていきます。
STEP確認
この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP3-4」です。
単独でも読める記事になっていますが全体の流れを確認したい方は下記リンクへ進みください。
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【結論】行動のやる気・モチベーションには“報酬”が必要
私たちが自然に動けるのは、「楽しい」「得する」と脳が感じたとき。これがやる気の源として「報酬」になります。
ギャンブルを「やめなきゃ」だけでは得られむものがイメージしづらく、モチベーションが続かないし行きたくなる気持ちになってしまいます。
こんな「行きたくなる気持ち」を「行ったらもったいない気持ち」に変える為に有効な手段として、「今やめたら手に入るもの」などを数字やイメージで“見える化”する方法があります。
それが具体的に手に入るものが報酬となり、無理矢理やる気を出すのではなく“納得と期待”で動けるようになる。また報酬は自然と目に入るようにすることで意識しますし、一番重たい最初の一歩を行うやる気を生み出すことができます。
その為に一度自分の
- 「やめたら手に入る報酬」
- 「欲しいものリストを作成」
- 「達成したら○○を買う」
など報酬を一度考えてみましょう。
そして最終的には報酬を意思しなくても「この活動には報酬があるんだ」と“自然とやる気が湧く”ようになります。
【説明】モチベーションの生み出し方

やる気とモチベーション
まずこの違いですが、やる気は欲求を満たそうとする瞬間的な気持ちであるのに対し、
モチベーションは将来に向けて欲求を満たそうとする持続的な心構えと行動を意味しています。
モチベーションが高いから、やる気が出やすくなると言えます。
モチベーションが生まれる理由
人間のモチベーションには「内発的」と「外発的」の2種類があります。
内発的動機付け
- 「自分の内側から湧いてくるやりたい気持ち」が原動力
- 例:好奇心、楽しさ、達成感、自己成長への欲求
外発的動機付け
- 「外から与えられる報酬や評価」が原動力
- 例:お金、称賛、昇進、怒られたくない、褒められたい
基本的にはこの二つがモチベーションが生まれる理由と言われており、
報酬とは物理的な金銭以外にも多々あるということです。
「やめなきゃ」が続かない理由
下記は興味を対象としたとある研究の結果で、興味はモチベーションに繋がるものです。
モチベーション(興味)の順位
- 好奇心が満たされるから、楽しいからやる
- 価値があるからやる
- 褒められるからやる
- しておかないと不安だから(○○するべき、○○しなければならない)
この場合ギャンブルは楽しいからやる1位、それに対してやめなきゃいけない理由は4位になり、やめるモチベーションが低くなる理由です。
そもそも「やる気」は行動した後に湧いてくる
多くの人が「やる気が出ないから行動できない」と感じていますが、実際は逆です。
やる気とは、何かしらの行動を起こした“あと”に、脳内で生まれる現象と言われています。
これにはドーパミンと呼ばれる「報酬系」の神経伝達物質が関わっています。
「やったら得する」
「達成したら嬉しい」
という期待感・快感を生みだすものが報酬となり、脳がそれを知らないとやる気は出てきません。
だから「やる気を上げてから」ではなく、まず行動して報酬に何があるのかを脳に教えることが重要ということになります。
まずは気付く、そして意識して認識する
とはいえまずはやる気がないことには始まらない。
まずはやる気がない理由に「意識的に気付く」ことから始めましょう。
- なぜやる気がないのか?それは脳が報酬を予測出来ていないから
ただ一つ、これを思い出すだけでOKです。
そのあとで、じゃあ行動と報酬を結び付けようと、自分が意識して「こんないいことがあるぞ」と認識して行動をします。
※行動の邪魔になるものを排除することでより抵抗なく行動が可能になります。
そして行動の結果として報酬を与えて、脳に行動と報酬を関連付けて教えていけば脳は自然とやる気を出すようになっていきます。
見える化の効果
「今行動したら手に入るもの」などを数字やイメージで“見える化”することで、具体的に手に入るものが報酬となり、
無理矢理やる気を出すのではなく“納得と期待”で動けるようになる。
また報酬は自然と目に入るようにすることで意識しますし、一番重たい最初の一歩を行うやる気を生み出すことができます。
最終的には意思ではなく行動の結果報酬がもらえると脳が理解して、“自然とやる気が湧く”ようになり動けるようになります。
次は、実際の対策を解説していきます。
【方法①】金銭的メリット「やめたら手に入る報酬」

ギャンブルに使っていたお金、1ヶ月でいくらか思い出してみてください。
仮に1日5,000円、週3日で通っていた場合──
- 週:15,000円
- 月:60,000円
- 年:720,000円
- 5年で…360万円!
💡このお金でできること
- 海外旅行に年1回行ける
- 貯金+投資で将来に安心を持てる
- 車の頭金や引っ越し資金にも
- 大切な人へのプレゼントや親孝行にも使える
この「使わなかったお金」は、未来の自分を助ける報酬資産です。
【外発的報酬:目に見えるリターン】
ポイント
すでに使ってしまった金額に目をむけるのではなく、これからに目を向けてください。
STEP 2-2【パチンコ・スロットやめどきが分からない】 で解説した、
「サンクコスト効果」と呼ばれる、 失ったものを取り返そうとして、冷静な判断ができなくなる傾向や、
「損失回避バイアス」と呼ばれる、人は得をするよりも、損をしないことのほうを優先するという傾向により、
ネガティブな気持ちになりやすくなります。

設備のロス金額は重要です。その金額が少なければ働く私たちにも多く還元されますから。ロス改善をする時に、新規導入の時点で対策しとけばもっと儲かったのに・・・、なんてことは考えません。それより次の設備導入時には改善を活かそうと考えます。
【方法②】金銭的メリット「欲しいものリストを作成する」
一度自分の「欲しいものリストを作成」してみることで、ギャンブル以外に目を向けるきっかけになります。
- いま欲しいもの
- 昔欲しかったもの
ここでのポイントはギャンブル1日で使う金額以下になるように設定することです。
一石五鳥になる
ここで作成したリストには下記の効果があります。
- 【きっかけ】ギャンブル以外に目を向けるきっかけになる
- 【ブレーキ】1日やめればこれだけの物が買えると、天秤にかけることでギャンブル衝動を抑えるブレーキになる
- 【学習】本来の正しい価格設定のものを正しい金額を払って交換するという経験ができる
- 【やる気】同時に欲しいものを手に入れたいというモチベーションにも繋がる
- 【満足感】欲しい物を手に入れることで満足感が満たされギャンブルに行かなくても良くなる
リストにするだけでこれら一石五鳥になる効果を得られます。



ギャンブル依存症である昔の私は物が欲しい時に「勝ったらこれ買おう」といつも考えてました。もしくは増やしてあぶく銭で買おうなど。



この欲しいものを買う行為は満足感が得られるためギャンブルをやらなくても平気になったりする簡単な手段になるよ!
【方法③】金銭的メリット「達成したら○○を買う」
上記リストの続きですが「1日や1週間、1ヶ月達成できたから○○を買う」というご褒美を設定します。
ご褒美は正しく使えば脳を「成功=快」と結びつける最高の戦略になります!
- 1ヶ月達成! → 自分に新しいスニーカーをプレゼント
- 1日達成! → ちょっといいカフェで贅沢モーニング
- 記念に、理想の未来をイメージできるグッズを購入(貯金用のかわいいポーチなど)
有効な理由
- 短期目標+明確なご褒美をセットにすることで、脳が「達成=快感」と結びつきやすくなる
- 「とにかく我慢するだけ」だと脳が途中でモチベーションを失いやすいが、「達成したら報われる」があると頑張れる
- 小さな成功体験(まずは1週間クリア)が、次の行動エネルギーになる
ポイントと注意点
- ご褒美は「過去の習慣を思い出させない物」が望ましい
- 例:新しい趣味道具、カフェでゆっくり、服を買う など
- × ギャンブルを連想させるような「賭け系アイテム」や「ド派手な消費」は避ける
- できれば「自分を大切にする体験」や「未来につながるもの」を選ぶとさらに効果的
- 「買ったあとどう感じたか」をしっかり味わうと、脳にポジティブな強化学習が起きる



1週間でプチご褒美でも全く問題ありません。欲しいものを決めておくのも良いですが、○○円分好きなもの買うなどすると、何買おうかなと考えが続く=期待感がずっと続くのでおすすめです。私はDIYをやっていたので、その部品をアマゾンでずっと見ていました。
【方法④】時間的メリット「使える時間」として見える化する
ホールにいた時間も、実は大きな財産です。
仮に週3日 × 3時間 通っていたとしたら──
- 週9時間 → 月36時間 → 年間432時間(約18日分)
💡この時間でできること
- 筋トレやウォーキング → 健康と体力アップ
- 読書や勉強 → スキルアップや資格取得
- 家族と話す時間が増える
- 趣味に打ち込める
- 睡眠や休息にあてて体調も整う
ギャンブルをしない時間は、未来を変えるための成長時間です。
【内発的報酬:自己成長・自己肯定感の強化】



設備のロス時間は重要です。その時間があればより多くの生産が可能となりますから。私たちも普段から時間が無いと考えていますが、何かをやめることで生まれる時間は積み重なると膨大です。
【方法⑤】感情のメリット「満足感」として見える化する
ギャンブルをやめることで、お金や時間だけでなく、心の中にも余裕が生まれます。
- 罪悪感や後悔が減る
- 家族や大切な人との関係に自信が持てる
- 「自分を裏切らなかった」という達成感がある
- 小さな選択が“自信の種”になる
感情の安定と満足感の積み重ねが、内側からの強い報酬になります。
【内発的報酬:達成感・誇り】



私たち保全士は設備を安定稼働させることに誇りをもって仕事をしています。それと同じで金銭・時間以外でもやめることで得られるものを見える化してみましょう。
【仕掛け】「見える化」してモチベーションを湧かせる


得するイメージを頭の中で考えるだけでなく、 “実際に見える形”にすることで、より意識しやすくなり、モチベーションは自然に湧いてきます。
見える化の具体策
- 紙に「1ヶ月で●円浮く」と書いて貼る
- アプリで使わなかったお金を記録していく
- カレンダーに“やめた日”を記録(見返すと励みになる)
- 理想の未来の写真(旅行・貯金通帳など)を壁に貼る
- 毎日・毎週の記録を取る
モチベーションは気合を入れることではなく、「報酬を思い出せるきっかけ」があってこそ続きます。



工場では目標は一目で見て分かるところに貼っておきます。目標達成することで自分はやりきったぞ!と満足感に繋がります。その目標が自分の欲求と直結すればするほど効果的でしょう。
【補足】今後の活動でも活躍する「報酬」
今回の記事ではモチベーションを高めるために報酬を一度考えてもらっていますが、今後ギャンブルをやめる活動の中で「報酬」を用意する必要があります。
そのときにも今回考えた「メリット」が「報酬」になります。
特に欲しいものリストが今後の活動で重要になりますので、思いついたものをメモしておくとラクになります。
【注意】SNSでギャンブルをやめる仲間を作ることはオススメしません。
昨今ではSNSで同じ目標の仲間を集めてモチベーションアップに繋げようとする活動が増えてきています。ですがギャンブルをやめる仲間をSNSで作ることはあまりオススメできません。
理由ですが、まず目標に向かって一緒に進む仲間はモチベーションの維持に繋がります。ですがそれは勉強などの場合で、今回のような依存症の場合は話が別になります。
依存症の場合
なぜなら依存症の場合はやめてなくてもやめたと嘘をついてしまう可能性があり、それが自分を苦しめることに繋がります。
また依存症は孤独感が強まりやすい傾向があるので、目的が仲間との交流に変わってしまい、本当にやめたら仲間から離れることになるとやめない理由になる。
そして最後にお互いに間違った知識で話し合ってしまうかもしれないということです。
たとえば「甘えるな、他の人は出来てるぞ」といった否定。「私を置いてやめちゃうの?」といった足の引っ張り合いなどが平気で行われる可能性があります。
このようにギャンブルをやめるための仲間が、ギャンブルをやめにくくする環境を作ることになります。
【サポート】自助グループとの違い
自助グループといった集団での依存症回復に向けて活動しているサポートでは問題ありません。
なぜなら正しい知識が共通認識として浸透しているからになります。
ギャンブルをしてしまったことを正直に話すことや、してしまったことを否定しないところから始まり、経験の共有や対策を一緒に考えることでともに成長していきます。
本来は根性論で依存症を抜け出すことは良くはないと自助グループでも考えられていますが、そういった知識のない人には依存症になるのは根性が無いと考えている人もいます。
仲間が全員一定以上の知識を持っているのであればオススメできますが、SNSといったツールではそれも期待できませんし、逆効果になる可能性の方が高いため私はオススメしません。
【まとめ】報酬を戦略的に用意して、モチベーションを「湧かせる」
今回の内容を全て実践する必要はなくて、あくまでこれだけ自分にとって「報酬になりえる」ものがあるよと、探しやするなるように色々書きました。
ポイント
- やめなきゃいけない理由より、「やめて得する理由」が大切
- ギャンブルをやめることで、「お金・時間・感情・自信」が取り戻せる
- 我慢ではなく、「自分への報酬」として考える
- “得する理由”を見える化することで、自然とやめる選択がしやすくなる
これらを意識して、“未来の自分”にリターンを与え続ける仕組みを作ることが、やめるための本当のモチベーションになります。



故障や無駄を減らすだけじゃなく、機械は“利益”や“効率”が上がる仕組みが無いと工場が経営困難で維持出来なくなるため重要です。
人も一緒。「やめる理由」じゃなく「やめたら得する未来」が、モーターのように前へ進める力になるんです。
次回
次は、【STEP4】依存に負けない環境を整える、になります。
(パチンコ・スロット依存脱出ガイドに飛びます)
関連記事
シリーズ全体の流れを確認したい方はこちら。
このサイトが大切にしていること
「この世界は、生きづらいものだ」と思っていた過去があります。
でも今は、そう感じていたのは“思考の回路”が乱れていただけだったんだと気づきました。
このサイト「ゆるやめ」では機械保全士として培った現実重視の“視点”をベースに、脳科学や心理学の知識そして私自身の体験を交えて、我慢ではなく緩やかな仕組みでやめるヒントをお届けしています。
参考・出典
- 厚生労働省,依存症対策,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html - 楠奥繁則 (2004)。 職場におけるストレス・マネジメントの探究.立命館経営学, 42 (6), 115-133.
https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/record/694/files/be42_6kusuoku.pdf - 岡田涼, & 中谷素之. (2006). 動機づけスタイルが課題への興味に及ぼす影響 自己決定理論の枠組みから. 教育心理学研究, 54(1), 1-11.
https://doi.org/10.5926/jjep1953.54.1_1