ギャンブルをやめるには“行動を定着させる”ことが大切
「やる気が続かない」
「代替行動を決めたけど、すぐに飽きた」
そんな悩みを感じたことはありませんか?
特にギャンブル依存の場合、脳が「すぐに強い快感を得ること」に慣れているため、
新しい行動を続けるのは普通よりハードルが高いとされています。
だからこそ、「まずやってみる」だけでは足りない。
続けるための「仕組み」を意識的に作ることが大切です。
この記事では代替行動を習慣にするテクニックを解説していきます。
- なぜ「まずやってみる」だけでは続かないのか
- 習慣化と趣味になるまでの流れ
- 続けるために必要な「報酬・気づき・記録」の3つの仕組み
STEP確認
この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP5-3」です。
単独でも読める記事になっていますが全体の流れを確認したい方は下記リンクへ進みください。
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【結論】習慣化はテクニック
重要なのは、代替行動をただやるだけという楽しくなることをただ待つのではなく、自分から拾いに行く意識です。
やってみても続かないのは趣味になる為の小さな楽しみに気付いていないから。でもギャンブル依存症はギャンブル以外に興味が薄いことが様々な研究結果でわかっています。
ですのでまずは習慣化が先決。そのためのテクニックをいくつか紹介します。
そのうえで
「今日は少し気分がスッキリした」
「昨日より集中できたかも」
「前よりうまくできた」
──こうした小さなプラスを、意識して見つけていくこと。
それが脳の報酬系を刺激し、ギャンブル以外の快感回路を育てていく鍵になります。
【理由①】まずやってみようだけでは足りない

代替行動や趣味を作るには「まずやってみよう」という話をよく耳にしますが、これは半分正解であり、半分は間違いでもあります。
たしかに、最初から楽しさや達成感、リフレッシュできる感覚が得られる場合には、「まずやってみる」だけで十分かもしれません。
しかし代替行動によっては、ある程度続けないとその楽しさに気づけないものも少なくありません。
ギャンブルは速攻性のある快楽だった
ギャンブル行動は、プレイした瞬間にドーパミン(快感物質)が強く出る「即効性」がありました。
一方、新しい代替行動は──
- 筋トレも
- 読書も
- 資格勉強も
すぐに快感が得られるわけではないです。
ですので最初は「なんか違うな」「面白くないかも」と感じるのは、むしろ自然な反応です。
「つまらない」と感じた時点でやめやすい脳回路になっている
特にギャンブル依存の場合、脳の報酬系がギャンブルに強く結びついているため、他の行動に対して自然に興味を持つことが難しいと言われています。
- お金にならない運動の楽しさが分からない
- 散歩の何が楽しいの?
- 面白かったけどお金にならないから無意味
依存脳は「すぐに報酬が得られない行動」に弱い
更にギャンブル依存の人はブレーキが効かず、目先の報酬に飛びつきやすくなる傾向があることが研究で分かっています。
そのため、何の対策もせずに「とりあえずやってみる」だけでは、すぐに「つまらない」と感じて続かない可能性が高いのです。
脳は本能的に無駄なことをやりたくない
脳は快感を感じられない行動に対して「やめた方がいい」と信号を出す性質を持っています。
ここまでの理由として
- ギャンブルは速攻性があり
- 他の活動はつまらない
- そして依存症は目先の報酬に飛びつきやすい
ここまで条件がそろっていれば脳は「やめた方がいい」とギャンブル以外の活動に対して信号を出してしまい、結果やる気も起きず、そのままやめてしまいます。
やってみただけでは足りない
依存症にとっては、ギャンブルに比べればほぼすべての行動が「刺激不足」に見える。だから、「やってみただけ」ではなかなか継続できないのです。
【理由②】報酬の種類は大きく2つ

次はさらにやるだけでは続かない理由をやる気に的をしぼって説明します。
やる気に直結する報酬ですが、大きく分類すると二つがあります。
やる気とモチベーション
まずこの違いですが、やる気は欲求を満たそうとする瞬間的な気持ちであるのに対し、
モチベーションは将来に向けて欲求を満たそうとする持続的な心構えと行動を意味しています。
モチベーションが高いから、やる気が出やすくなると言えます。
報酬は2種類
報酬には大きく分けて2種類あります。
種類 | 内容 | 例 |
---|---|---|
内発的報酬 | 自分の内側から湧き上がる喜び | 楽しい、成長できた、達成感を感じた |
外発的報酬 | 外から与えられる喜び | お金が浮いた、褒められた、成果が見える |
基本的にはこの二つがモチベーションが生まれる理由と言われており、報酬とは物理的な金銭以外にも多々あるということです。
ただやるだけでは報酬にならない
ギャンブルの代わりといって色々なものに手を出しても続かない、楽しくない。
それはこの2種類の報酬が理由になります。
単純に報酬が無いから続かないということです。
暇つぶしでは足りない
ここまでで解説したように、私たちの脳は快感を求めています。
だから、新しい行動にも「報酬(得られる喜び)」が必要です。
代替行動は、「ただの暇つぶし」ではいけない、ということです。
【方法】代替行動を続けるための仕組み

ギャンブルと同じ「仕組み作り」が必要
ギャンブルは演出 → 大当たり → 景品 → 快感刺激
という流れで脳に「自動で反応出来る習慣」を作り上げてきました。
つまり──
たった1回勝ったから依存したのではありません。
「行動 → 報酬 → 快感」という流れを何度も繰り返した結果、
脳が無意識に反応する仕組みができあがったのです。
これと同じことを、今度は「自分にとってプラスになる行動」で作っていく必要があります。
ここからはどうすれば良いのかの流れを説明します。
【実施①】まずは気付く
私たちは自分にとって興味のないことはやる気が起きません。
まずはやる気がない理由に「意識的に気付く」ことから始めましょう。
- なぜやる気がないのか?それは脳が報酬を予測出来ていないから
ただ一つ、これを思い出すだけでOKです。
【実施②】やらない理由や邪魔を排除する
脳は本能的に無駄なことや、不快なものをやりたくないです。
そのため行動をする弊害になるものは可能な限り取り除くことが仕組みとして重要です。
弊害になるもの
- 熱い・寒い
- マルチタスク
- 変化
- 強制
- 手間
- 難しい
こういったものが弊害になります。
たとえば
- 今日は雨だから(身体的に影響するものは不快になる)
- 机の上が汚い(脳が情報を入り入れる無駄)
- 作業環境が変わる(変化したものを脳が認識する無駄)
- やれと言われた事(自分事ではなく、他人事と認識するので無駄)
- 行動までの準備が多い(手間をかけるだけの価値が無い、無駄)
- 技術がなく恥ずかしい思いをする(失敗するかもと不快になる)
特に人からやれと言われたことはやる気を大幅に下げますので、自主的に取り組むことが大切です。(自分が進んで聞いて意見を取り入れるのは良い!)

私は運動を取り入れる際に同じ服を3つ用意して靴やバックを玄関に置き、すぐ出せるようにしました。どれを着るか考える、今洗濯してて服が無いかもと考える、道具はどこだっけといった、やらない理由を事前に排除しました。
【実施③】報酬を用意する
意識的にやる気が出る報酬と、行動の後に脳が理解できる報酬を用意します。
- ギャンブルをやめたら〇〇円!【意識的】
- 行動の後にカフェでちょっとした贅沢時間【脳】
- 1ヶ月続いたらスニーカーを買おう
ポイントとしては脳は長期的な報酬に反応しにくくなっていますので、
- ちょっとした報酬を行動の直後にすること。
- そして報酬はマンネリ化しないように色々用意すること。
下記記事でモチベーションや報酬の参考について解説していますので、まだ読んでいない方はぜひ読んでみてください。
【実施④】既成事実を作る
たとえば勉強の場合は、やる気がなくても机で勉強した。この事実が脳にインプットされていきます。
- 机+座って本を読む=勉強
こうしてセットで脳は学習していきますので、出来るだけ同じ環境で行いましょう。
最初は5分でもOK!この事実が徐々に脳に変化をもたらします。
【実施⑤】「気づきポイント」を仕込む
行動中や終わった直後に、意識的に「よかったこと」「楽しかったこと」を拾うようにします。
- 「やった後、ちょっと気分がスッキリしたな」と感じたらメモする
- 「思ったより集中できたな」「うまくできたな」と気づいた瞬間を言葉にする
- 「これ、意外と向いてるかも」と思えたら自分に言ってあげる
内発的報酬が育ってきても小さくて見逃してしまう場合があります。
気づける仕組みを組んでおきましょう。
気づきやすくなる視点リスト
下記リストは様々な視点で分類した参考になります。
- 【金銭的メリット視点】
- → もしギャンブルをやっていたら失っていたお金が、今日はそのまま残った。
- 【時間的メリット視点】
- → ギャンブルに使っていた時間で、今日は新しい知識をひとつ得られた。
- 【感情の変化視点】
- → 少しでも「楽しい」「スッキリした」「気分が違った」と感じたら、それは大きな一歩。
- 【身体的変化視点】
- → 外を散歩したら体が軽くなった/寝つきがよくなった、など体感の変化。
- 【スキル・経験視点】
- → まだ上手くなくても、今日「初めて〇〇ができた」という経験がひとつ増えた。
- 【未来への積み重ね視点】
- → 今日やったことが、半年後の自分の趣味や生活の選択肢を広げるかもしれない。
外発的報酬も混じってますが、ギャンブル以外で気付くことが重要ですので、様々な視点から行動に価値を見出していきましょう!
【実施⑥】「記録」をセットで用意する
さらに「報酬」と「気付き」を忘れないために、シンプルな記録を残すと効果が続きやすいです。
- 1日1行、「今日やったことと気づき」をノートにメモ
- チェックリストアプリで達成日を記録
- 月末にまとめて「これだけできた」と振り返る
継続して行えているという記録は、達成感に繋がります。
また内発的報酬が育ってきても振り返らないと気付かない場合があります。
徐々に育っていく
そして、続けるうちに──
「健康になってきた」
「できなかったことができるようになった」
「楽しくなってきた」
など、自然と内発的報酬が育っていきます。
【補足】趣味は育ててなるもの
趣味は内発的報酬
一般的に趣味と呼ばれるものは「内発的報酬」です。
これは自分がやったことが「自分の喜びに繋がる」ということが分からないと報酬になりません。
報酬を見付け、育てないと趣味にはならない
自分にとって良かったものが報酬となりますので、他人からのメリットなどは関係ありません。
- 散歩がいいって聞くし、やってみたけど良さが分からない。
- 読書の何が面白いの?
- 音楽は好きだけどそれだけ
自分にとって良いと気付くこと、そしてその大きさも自分で育てないと報酬は大きくなりません。
【補足】習慣化は過半数を意識する
私たち人は生体リズムというものがあります。これは1日は24時間、1週間は7日などリズムが決まっていると研究の結果考えられています。(ハエのリズムは変わらないという研究)
習慣になりやすい方法
これはつまり生体リズムは簡単には変えられないということ。そしてリズムの過半数以上を行うことは習慣になりやすいと言われています。
行動は1週間のうち4日以上行うと習慣になりやすいと研究結果で考えられています。ですので週に1時間より、1回5分を4日間の方が習慣になりやすくなります。
3日坊主になる
同じ行動を週3日程度では習慣にならない。週4日以上続けることで習慣になりやすいと言われています。
「3日坊主」と呼ばれるものはこれのことです。(科学的根拠はうすいですが、1週間は7日のという生体リズムの周期は上記根拠がある)
過半数を超える
これは4日が大事ではなく、1週間の過半数をやっていることで脳が必要な行動なのだと認識しやすいと言われています。
ですので週に1時間頑張るより、週に4回5分だけ。
こっちのほうが習慣になりやすくなるということです。
休日だけやるでは習慣になりにくい
忙しい社会人では新しいことを始める時、休日に行うことがほとんどではないでしょうか?
それが習慣にならないのは脳にとって週に1回、1/7と判断して重要ではないからです。
ですのでハミガキなど数分の活動を毎日やるほうが習慣になりやすいということになります。
【結論】習慣化はテクニックである
重要なのは、楽しいことをただ待つのではなく、自分から拾いに行く意識です。
習慣化と趣味までの流れを振り返ると
習慣化の流れ
下記は習慣化となるまでの流れになります。
- やる気が出ていない理由に意識的に気付く
- なぜやる気が出ないのか? →報酬が無い
- 最初は行動に対して報酬を意識的に与える
- 徐々に無意識的に報酬を欲するようになる
- 報酬が欲しくて無意識にやりたくなる
- 【この時点で習慣化】
趣味になるまでの流れ
下記は上記の続きで、さらにその先にある趣味になるまでになります。
- 外的報酬を求めて活動をする
- 活動の中で小さな楽しみに気付く
- 小さな楽しみが育っていく
- 目的が外的報酬ではなく、小さな楽しみである内的報酬に変化していく
- やること自体が目的になる
- 【この時点で趣味】
まずは習慣化、そして趣味まで育てる
やってみても続かないのは趣味になる為の小さな楽しみに気付いていないから。でもギャンブル依存症はギャンブル以外に興味が薄いことが様々な研究結果でわかっています。
ですのでまずは習慣化、そのうえで
「今日は少し気分がスッキリした」
「昨日より集中できたかも」
「前よりうまくできた」
──こうした小さなプラスを、意識して見つけていくこと。
それが脳の報酬系を刺激し、ギャンブル以外の快感回路を育てていく鍵になります。
まとめ|仕組みで定着させる
仕組みの流れ
- まずは気付く
- やらない理由や邪魔を排除する(行動のハードルを下げる)
- 報酬を意識する(外発的報酬で習慣化)
- 既成事実を作る
- 「気づきポイント」を仕込む(報酬を増やす)
- 「記録」を用意する(できたことを可視化する)
ポイント
- ギャンブル依存の脳は「すぐに強い快感を得る行動」に慣れている
- だから新しい代替行動は「すぐに楽しい!」とは感じにくいのが普通
- 「まずやってみる」だけでは続かず、仕組み化が必要
このSTEPで分かること
- なぜ「まずやってみる」だけでは続かないのか
- 依存脳にとって、新しい行動には「工夫」が必要な理由
- 新しい行動を定着させるには「報酬・気づき・記録」の3つの仕組みが必要
- 継続できないのは「自分がダメだから」ではなく「仕組み不足」なだけだとわかる
- 仕組みを作ることで、脳の新しい快感回路を育てていけると理解できる
次回
次は【STEP6】依存衝動にルールを設けるを解説します。
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このサイトが大切にしていること
「この世界は、生きづらいものだ」と思っていた過去があります。
でも今は、そう感じていたのは“思考の回路”が乱れていただけだったんだと気づきました。
このサイト「ゆるやめ」では機械保全士として培った現実重視の“視点”をベースに、脳科学や心理学の知識そして私自身の体験を交えて、我慢ではなく緩やかな仕組みでやめるヒントをお届けしています。
よければ他の記事も覗いてみてくださいね。
参考・出典
- 厚生労働省,依存症についてもっと知りたい方へ,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html - 厚生労働省,依存症対策,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html - 厚生労働省,ギャンブル依存症の理解と相談支援の視点2025/4/23
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000633402.pdf - 国立大学法人京都大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構ギャンブル依存症の神経メカニズム―前頭葉の一部の活動や結合の低下でリスクの取り方の柔軟性に障害―,2025/4/23
https://www.amed.go.jp/news/release_20170404-02.html