ギャンブルをやめるには“代わりの行動を続けること”が大切
「ギャンブルをやめたら絶対暇になる」
「ギャンブルをやらない生活が想像できない」
「やめたら何が面白いんだ?」
──そんな思いはありませんか?
この経験、きっと多くの人が持っていると思います。
そして、そこには「空白」という大きな落とし穴があります。
ギャンブルをやめた後、空いた時間、空いたエネルギー、空いた感情。
その「空白」を埋める準備ができていないと、脳は自然に、かつて快感を得たギャンブルに引き寄せられてしまう。
だからギャンブルの代わりをみんな探し求めるようになります。
ですがこの代わりの行動はただ「空白」を埋めるだけではあまり意味がありません。
この記事ではギャンブルをやめるために大切な「代替行動」についてなぜ必要なのか、どんな考え方で選べばいいのかを解説していきます。
- なぜ「空白」が危険なのか
- なぜ代替行動が「やめるため」に必要なのか
- 代替行動はただの代わりではない理由
STEP確認
この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP5-1」です。
単独でも読める記事になっていますが全体の流れを確認したい方は下記リンクへ進みください。
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【結論】つまらなくて当たり前。まずは習慣にする
ギャンブル依存症でもっとも多く言われることは「ギャンブル以外で楽しいことがない」と言う事だと私は思っています。
そして「楽しくない」ことは異常ではなく、ギャンブル依存症の影響もあります。
ですのでギャンブルの代わり、ギャンブルと同等の楽しいことを探していると、「いつまでも見つからない」。
ではどうするかというと、見つかるまではとりあえず何か代わりの行動(代替行動)を継続すること。
たとえるなら「味がしないけど健康的なごはん」を食べているような感覚かもしれません。でも食べ続けることで、“自然な甘み”や“ほのかな風味”に気づける脳になっていきます。
つまり代替行動に求めるもとは楽しさではなく、「継続して行う習慣にする」ということです。
そして習慣に必要なことは一歩一歩進み続けること。
ですので最初は小さな一歩でいいのです。
- 5分だけ読書する
- 1駅だけ歩く
- 少しだけ料理をしてみる
それが積み重なって、習慣となり、やがてあなたの脳の中に「新しい楽しさを感じる回路」ができあがります。
【補足】この知識の必要性
ギャンブル依存症は薬や病院に行くだけで治るものではないと言われています。
その理由が結局のところ“本人がやめたいと思わないとやめにくい”からになります。
そのため依存症の治療では認知行動療法と呼ばれる治療が有効とされています。
代替行動はその中でも知識だけではなく、行動をして、体験して、実感して、また考えが変わる。この繰り返しが認知行動療法として有効になります。
今回の記事ではこの認知行動療法の一つとして私が実際にためになったと感じ、代替行動をすることで、ギャンブルに対する思いが変わったのでそれをみなさんにも知ってもらうことを目的としています。
【理由】なぜ代替行動が必要なのか?4つの理由

1.脳には「空白を嫌う性質」がある
人間の脳は、「何もしない状態」を好みません。
これは空白の原則と呼ばれ、脳は空白をつくるとそれを埋めようとすると言われています。
例えば
- 3×5=□
- 1.2.□.4.5.6
- ジグソーパズルの最後のピース
この空白の隙間を無意識に埋めたいと感じてしまう性質です。
これは物だけでなく時間や情報も同じで、「ヒマ」という「空白」があると、そわそわして、落ち着きがなくなったり、何かしないと勿体ないと思ってしまいます。
だからこそ、やめた後に空白を作らないようにするのではなく、空白ができる前から「新しい行動」を流し込んでおくことが必要です。
2.脳は常に刺激や快感を求める
私たちの脳は、常に刺激や快感を求めるようにできています。
これは快・痛みの原則と呼ばれ、脳は快を求めて、痛みを避ける性質があると言われています。
何もせず空白になっていると、脳は快を求めて、自然と「過去に楽しかったこと」「快感を得られたこと」を思い出そうとします。
ギャンブルは、ドーパミン(快感をもたらす脳内物質)を手っ取り早く、強烈に分泌させる行動である。
それを知っている脳が、命令を出し、私たちの行動を支配してしまうのです。
つまり何もしなければ、脳は過去の快感を求めてしまう。
だから「新しい快感」を育てる行動を先に用意しておく必要があるのです。
3.ギャンブル依存の脳は「快楽モンスター化」している
はっきり言ってギャンブル依存症の状態でギャンブルを超える楽しさを見付けることは困難となります。
これは様々な研究で分かっていることですが、脳がギャンブル以外に対して反応が悪くなっていることが原因です。
脳が高刺激に慣れすぎている状態なので、通常の行動(散歩、読書、人との会話など)は「刺激が足りない=つまらない」と感じます。
これは「つまらない」のではなく、「刺激の基準値が狂っている」状態です。
例えるなら、辛い物ばかり食べて舌が麻痺して「普通の料理の味がしない」状態。一番美味しいものが辛いものと答える人はギャンブル依存と同じ現象になっていると言えます。
4.脳は同時に2つ以上のことをやるのが苦手
私たちの脳は、同時に2つ以上のことをこなすことが苦手です。
これは焦点化の原則と呼ばれ、意識は同時に2つ以上のことをとらえるのが苦手である。その為、焦点化が起こると言われています。
例えば
- 楽しいことと、嫌なことを同時に思い浮かべる
- テレビに集中しながら、他の人の話を聞き洩らさない
- スポーツで運動をしながら、晩御飯のおかずを考える
見ている、聴いているはずなのに、見えない、聞こえない。
これは焦点を当てている情報以外は遮断され認識されにくいということ。
これは脳の欠点ではなく、自分が見たいもの、聴きたいことといった、感じたいことを感じ取る為の安全機能と言われています。集中して、危険なことから注意散漫にならない為の機能です。
その結果、危険でなくても脳は2つ以上のことをとらえるのが苦手です。
つまり、新しい行動に意識を向ければ、ギャンブルの欲求は自然と目立たなくなる。
ここでも重要なのは、やめた後の「空白」をどうするかではなく、新しい行動に意識を先に向けることです。
【効果】代替行動で得られる4つのこと

1.新たな快楽を育てること
最初はつまらないと感じても、続けることで脳が「この程度の刺激でも報酬が得られる」と報酬回路を再学習し始めます。
ギャンブルをやめるために必要なのは、「我慢」ではありません。
- 新しい行動
- 新しい刺激
- 新しい快感
これらを通して、脳にギャンブル以外の快感回路を育てることです。
たとえば──
- 読書をする
- 軽い運動をする
- 料理や勉強を始める
これに対して実際に体験し、意外と簡単で楽しいなど、脳が快感という報酬を受け取ることで「趣味=快感」と脳が理解して学習していきます。
こうなるとギャンブルと同様で、脳が「報酬」を欲しがるようになる、つまり無意識にやる気が出てくるようになります。
このように脳内に「別の快感回路」を刻み、ギャンブルへの依存回路を徐々に薄めていく役割を果たします。
2.正しい快楽の形を学習できる
私たちの脳は知識だけでは「新しい回路」は作られません。
これは「○○をやった方が得」と自分の意識や頭で理解していても、回路が作られていないので、脳は行動しようとはしません。
たとえば──
- 節約が大事とは分かるけどやる気がでない
- 勉強が大事とは分かるけどやる気がでない
- 賢い生き方が良いとは思うけどやる気がでない
これに対して実際に体験し、意外と簡単で楽しいなど、脳が快感という報酬を受け取ることで「節約=快感」と脳が理解して学習していきます。
こうした行動が、ギャンブルというすぐに手にする快楽ではなく、行動して手間をかけて手に入れる快楽という正しい快楽の形を脳が学習していきます。
3.小さな快感を「意識的に見つける」気付きの工夫
「ちょっと気分が軽くなった」「終わった後にスッキリした」などの小さな変化に意識を向ける習慣を身に付けることができます。
これは小さな快感に気付き脳に“報酬”を送る訓練とも言えます。
脳が学習というよりかは、自分自身が意識して行うテクニックで、物事に対して様々な視点で見るようになり、興味がわく可能性が高くなります。
4.「快楽モンスター」から「快感発見」への切り替え
ギャンブル依存脳は「強い刺激を待つ」受け身の脳。
代替行動をしながら気付く工夫をすることで「自分で楽しいを見つけにいく」主体的な脳への切り替えが起こります。
世の中が楽しいか、つまらないかは人それぞれ。結局のところ脳が報酬と認識すれば世の中は楽しいことだらけになるということです。
小さな快楽を多々発見できるようになり、それで脳が「こんなもんかと納得」できるようになってくれば徐々に快楽モンスターから日常生活で「退屈でも苦痛じゃない生活」ができるようになっていきます。
【結論】代替行動はただの代わりではなく、学習と変化をもたらす
「楽しくない」ことは異常ではなく、ギャンブル依存症の影響もあります。
でもそのことを知らないままであれば、「つまらないからやめる」「意味がないからやめる」といつまでもギャンブルと同等の楽しいことを求めてギャンブルに戻る生活になります。
ですが代替行動で小さな快感を見付ける練習、苦労の先にある快感といった学習をすることで、日常生活で「退屈でも苦痛じゃない生活」にすることができます。
もちろんこれらを知ったうえで快感を求めて新たなチャレンジをすることは非常に良いです。
ですがまずは正しい快感を得られるように、ギャンブル依存症から抜け出してから健全な刺激を楽しみましょう。
代替行動を習慣にするコツは下記記事で解説していますが、まずは次の記事でどんな代替行動が良いかを見てみる方が良いかもしれません。
まとめ|空白を恐れず、未来のための「新しい習慣」を作ろう
ポイント
- ギャンブル依存は「空白」ができると元に戻りやすい
- 代替行動は「やめた後の空白を埋めるもの」ではなく「やめるために先に用意する脳の新しい回路」
- 脳は空白を嫌い、快感を求め、意識は一点集中しやすい特性がある
- だからこそ、先に意識の焦点を「別の行動」に向けることが重要
- 小さな行動でも、繰り返せば快感回路として育つ
- 我慢でやめるのではなく、代わりの快感で乗り換える感覚が大切
このSTEPで分かること
- 「代替行動」は空白対策ではなく、快感回路の新設工事であると理解できる
- ギャンブル依存の脳は「つまらなく感じて当然」と知ることで自己否定が減る
- 新しい刺激は、最初は弱くても“続けることで快感”になっていく仕組みがわかる
- 「空白に飲み込まれる前に」「小さく始めること」の意味が腑に落ちる
- “未来に向けた脳づくり”という前向きなイメージでスタートが切れる
次回
次は「代替行動を選ぶ(リスト80選)」方法を解説します。
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このサイトが大切にしていること
「この世界は、生きづらいものだ」と思っていた過去があります。
でも今は、そう感じていたのは“思考の回路”が乱れていただけだったんだと気づきました。
このサイト「ゆるやめ」では機械保全士として培った現実重視の“視点”をベースに、脳科学や心理学の知識そして私自身の体験を交えて、我慢ではなく緩やかな仕組みでやめるヒントをお届けしています。
よければ他の記事も覗いてみてくださいね。
参考・出典
- 厚生労働省,依存症についてもっと知りたい方へ,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html - 厚生労働省,依存症対策,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html - 厚生労働省,ギャンブル依存症の理解と相談支援の視点2025/4/23
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000633402.pdf - 国立大学法人京都大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構ギャンブル依存症の神経メカニズム―前頭葉の一部の活動や結合の低下でリスクの取り方の柔軟性に障害―,2025/4/23
https://www.amed.go.jp/news/release_20170404-02.html