行きたくなってしまうのは、「環境」が整っていない
「もうやめたい」「行かないと決めたのに、気づいたら足が向いている」──
そんな経験ありませんか?
脳が“いつもの刺激”に反応して、自動で行きたくなるスイッチが入る環境になっているからかもしれません。
ギャンブルをやりたくなる衝動はギャンブル中だけでなく、日常生活にある外からの物理的な刺激トリガーによっても起こります。
この記事ではギャンブルに「行きたくなる環境」を「行きたくならない環境」に変えて、やめられる環境に整える対策を物理的トリガーに焦点を絞って解説します。
- 行きたくならない環境を作る方法(物理的トリガー対策)
- 具体的にやるべき対策リスト
STEP確認
この記事はギャンブル依存症から抜け出すための「STEP4-1」です。
単独でも読める記事になっていますが全体の流れを確認したい方は下記リンクへお進みください。
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【結論】「行けない仕組み」ではなく「行きたくならない仕組み」を作る
従来のギャンブル対策としてよく聞く、現金を持ち歩かない「行けないように物理的行動の遮断」は有効です。
ですがその効果の多くはギャンブル衝動が起きた後に効く、つまり行きたいけど行けないから我慢となり、我慢頼りになります。
そうではなく、その一歩手前“スイッチを入れないこと”に注目します。
- トリガー:きっかけ(お金、時間、場所など)
- スイッチ:きっかけが重なって入る(スイッチON=ギャンブル衝動)
ポイントは「トリガーを引かせない」ことで、脳のスイッチが入りそうな視覚・音・ルート・物品といった物理的なトリガーをあらかじめ排除・回避・遮断することで、“そもそも衝動が起きにくい環境”を作ります。
【説明】行きたくなる前に「遮断する」具体策

下記は具体策の例になります。
1.スマホ・ネットからのトリガーを遮断
- ギャンブル関連アプリ・ブックマークを削除
- YouTube・SNSの履歴やおすすめ動画を一掃
- ブラウザに広告ブロックを設定(「ギャンブル」ワードを非表示に)
2.通勤・生活ルートを変える
- パチンコ屋の前を通る道をGoogleマップで除外
- コンビニやATMなど「引き金になりやすい場所」をルートから外す
- 特定の駅・時間帯など“流れで行きがちなパターン”を見直す
3.お金の使い方に“物理的ストッパー”をつける
- 財布に入れる金額を制限(例:毎日2,000円以下)
- 給料日は“自動分配”してすぐに他口座 or 封筒管理へ
- 現金主義から、プリペイド式ICやQR決済へ移行(ATMとの接触を減らす)
4.視覚・感覚トリガーを物理的に消す
- ギャンブルの記録ノート・戦歴表は視界に入らない場所へ封印
- スマホケース・財布など“依存期に使っていた物”は新しい物に変更
- テレビや動画で“勝負系シーン”が流れたら、すぐチャンネルを変える

危険な機械は「近づけないようにする」のが基本。
人間も同じです。
その一歩目として“危険に近寄る理由が無い”環境にしておくことが、最大の安全装置です。
【補足】トリガーのチェックリストについて
STEP3で気づいた“トリガー”とつながっている
覚えていますか?
STEP3-2|依存衝動の4つのトリガーで紹介したチェックリスト。
その中にあった【物理的刺激】の項目、実は今回のステップと完全に連動しています。
自分のトリガーを見える化した上でそれを遮断するのが、このステップのポイントになります。すでにチェックリストを実行済みの方は下記一覧を対策参考にしてください。
まだ自分のトリガーを見える化していない場合はぜひ一度チェックリストをやってもらうと、自分でゼロからトリガーを探す手間が省けるかもしれません。
詳しい記事は下記をご覧ください
【実施】トリガーを“引かせない”対策22選


対策集
トリガー | トリガーを引かせない工夫(予防・遮断) |
---|---|
ギャンブル施設の前を通ると気になる | ● 通勤・移動ルートを変更:Google Mapなどで通らない経路を登録・習慣化する ● 「通ったら負け」と名付けたルールを作る(ゲーム感覚) |
昔勝った機種の名前や音、ホールの匂いを思い出す | ● 「連想させる音・映像・場所」を避ける環境作り(例:動画サイトの履歴を削除、ホール近辺を通らない) ● 特定の香り(アロマなど)を使って脳に新しい記憶を結びつける |
過去の大勝ちがフラッシュバックする | ● トリガーを呼び起こすきっかけ(写真・記録など)を視界から排除 ● スマホのアルバム整理:ギャンブル関連の写真を削除・非表示化 |
スマホやSNSでギャンブル広告が出てくる | ● アプリの通知・広告表示をオフ、ブラウザの広告ブロックを導入 ● 「興味なし」とフィードバックしてアルゴリズムの調整を繰り返す |
ATMでお金を下ろすと衝動が起きる | ● 現金ではなくキャッシュレス決済に切り替える ● ATMでまとまった額を引き出さない(少額+目的別に封筒管理) |
ギャンブルに使っていたノート・戦歴表など | ● 物理的に封印:段ボールに入れてガムテープで封じる、捨てる ● 視界に入る場所に絶対置かないルール化 |
ギャンブル系アプリ・サイトがスマホにある | ● アンインストール&アプリストア制限設定(ペアレンタルロック) ● 起動に2段階認証などワンステップ余分な壁を作る |
コンビニ・駅の「当たる」系広告に引っ張られる | ● 行くコンビニを変更・限定する(目に入る広告の種類が変わる) ● 「くじを見ない、近寄らない」を事前に自分と約束しておく |
ギャンブルに使っていた財布やスマホケース | ● 物品の買い替え:新しい「再スタート専用グッズ」に切り替える ● 旧グッズは使用不可ゾーンへ(別の場所に収納) |
ギャンブルシーンのある番組・アニメ | ● TV・YouTubeの視聴履歴を一掃して“関連動画”を出させない ● レコメンド(オススメ)される媒体は登録解除 or 自動再生オフ |
深夜の静かな部屋でスマホを見てしまう | ● スマホを別の部屋に置いて寝る/寝室でのスマホ禁止 ● 夜用の照明を「快眠モード」にし、環境そのものを“癒し回路”へ変更 |



安全装置は点検項目に沿ってメンテナンスを行ってその機能を十分に果たす必要があります。何をするべきかのリストはその為に必要不可欠。
【結論】これは「自分を縛る」ためではなく「自分を守る」ため
このステップでやっているのは、衝動が起きる“前段階”の条件を変えることです。
つまり、「やりたい気持ちが出てから戦う」のではなく“その気持ちを起こさせない”工夫。
これは我慢や根性に頼らない自分を守るための方法です。



機械のトラブルも、「壊れた瞬間」に対処するのではなく、その前に何が起きていたかを見て対策するのが整備の基本です。



衝動が出る前に「スイッチが入る流れ」を見つけて、先手を打つことが一番の安全策!
補足説明
💡感情や人との関係、日常のタイミングなど間接的な要素がトリガーになっている場合は、次の記事で詳しく解説しています。
【まとめ】
ポイント
- ギャンブルにハマるのは、「引き金」がそばにあるから
- 「我慢」より「遮断」──これが長続きする対策の基本
- 自分のトリガーを特定し、それが作動しない環境を整えよう
このSTEPで得られること
- そもそも衝動が起きにくくなるので、我慢する必要が減る
- 意志に頼らない「自動的な防止回路」が働く
- やめるための最初のハードルを大幅に下げられる
次回
次は、「物理的」だけでなく「関節的」トリガーも整えていきます。
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このサイトが大切にしていること
「この世界は、生きづらいものだ」と思っていた過去があります。
でも今は、そう感じていたのは“思考の回路”が乱れていただけだったんだと気づきました。
このサイト「ゆるやめ」では機械保全士として培った現実重視の“視点”をベースに、脳科学や心理学の知識そして私自身の体験を交えて、我慢ではなく緩やかな仕組みでやめるヒントをお届けしています。
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参考・出典
- 厚生労働省,依存症についてもっと知りたい方へ,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149274.html - 厚生労働省,依存症対策,2025/4/21
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html - 厚生労働省,ギャンブル依存症の理解と相談支援の視点2025/4/23
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000633402.pdf